お互い面識のないゼロ状況から信頼関係まで持っていくのは、なかなか難しいことです。
特に、新規開拓の営業や医療・介護の現場などでは、初対面の相手との『心理的な壁』をいかにして取り崩すのかが大きなテーマになります。
そこで、ラポールの法則を学ぶ必要が出てくるのです。
ここでは、営業担当社員が新規で個人宅へ飛び込み営業したと仮定して、ラポールの法則を見て行きましょう。
信頼関係を作るまでの壁は厚い
あなたは、事前のアポ無しでいきなり営業マンが訪問して来たなら、どう感じますか?程度の差こそあっても、抵抗感を感じると思います。
たとえ営業マンが性格温厚な好人物であっても、です。
営業マンは、開口一番に言います。
- 「突然お邪魔致しまして申し訳ございません」
- 「私は○会社の▲と申すものです」
- 『警戒心』
- 『拒否感』
- 『猜疑感』
これらは誰もが持つ、「防衛本能」です。
ヒトは自身を守る為に、本能的生理的に身構えます。
その相手に対する見えない壁は、とても分厚く硬いもの。
これらの相手に対するマイナスの感情(心理的な障壁)を、いかにして「信頼してもいいかも」とのプラスの感情へ持ち込むか、
これが新規開拓では最重要となるところです。
ここで、ラポールの法則が登場するわけです。
【ラポールの状態に至るには20分必要】
ここで、バリバリのゴリ押し営業マンならば、自分のペースでどんどん話しまくりです。当然、もういい加減にしてくれとなり、「お帰りください」となりますね。
信頼関係など、遠く及びません。
ガッツと根性で、どんどん飛び込むのも悪くはありませんが、あまり合理的とは言えないです。
そこで、切り口を替えてみます。
- 「決して押し売りに来たのではありません」
- 「ほんのちょっと、お話しを聞いて頂けるだけで充分なのです」
- 「それ以上、ご迷惑をお掛けするつもりはまったくございませんので、ご安心ください」
すると、「少しだけなら」と、分厚い壁を少し緩めて耳を傾けてくれる見込み客が出てきます。
つまりは、まったくの初対面にもかかわらず、少しだけ営業マンを信頼してくれたのです。
わずかながらでも防衛本能が融けて、ラポールの状態に一歩近づいたわけです。
ただ、まだ営業マンの素性も何も分からない状況ですから、心理的障壁はかなり厚いままです。
この厚い壁を打ち砕くのは、そう簡単なことではありません。
ちなみに、完全に『相手を信頼するに必要な時間』は15~20分間とされています。
相手のニーズを引き出すには
優秀な営業マンは、ここで早速商品の説明をするような愚は犯しません。そうではなく、見込み客に対して「自分に必要なこと」を掘り起こさせるような質問をしていきます。
- 「保険で何かお困りなことはございませんか」
- 「交通事故などで困ったことはありませんでしたか」
- 「生命保険の掛け金、高いですよね」
すると、今まで口を閉ざしていた見込み客は、少しずつ次第に話し始めます。
顧客の心情としては、「痛みを取り除きたい」心理が働くのです。
痛みとは、「事故の苦い経験」「保険に強引に加入させられた」「保険料支払いがキツイ」などですね。
これらを、何とかしたいと願う気持ちが働きます。
さて大事なのは、ここから!
【ラポールを築く4つの法則】
せっかく相手が話し出してくれた内容を、ただ漠然と聞いているだけでは信頼は築けません。そうではなくて、下記のような対応をするのです。
- 【相手の話す内容に相槌(あいづち)を打つ】
- 【相手の話すスピードやテンポと同じように話す】 人の話し方は百人百様です。
- 【相手が話す内容を「要約して応答する」】 会話の随所で、相手の話す内容を要約し、上手くまとめて返すのです。
- 「○○という事ですね」
- 「▲▲は大変ですよねえ」
- 「●●はすごいですからね」
- 【相手の身振り手振りを真似る】 これはそのままの意味で、とにかく相手が話す時の身振りのクセや手振りの特長を観察しながら、それを「真似る」のです。
「そうですよね」
「なるほどですね~」
「私もそう思います」
「そのとおりですね」
このように、相手の会話の内容について「同意」するのです。
それによって、「この人は、私の考えに共感している」と感じてもらえます。
そしてそれは、信頼に繋がるものです。
あ
相槌はそのまま「共感」に通じるものです。
それは「初対面の分厚い壁」を、徐々にゆるやかに取り除いていく最も大切な要因です。
早口だったり、ゆっくりだったり、断片的だったり。
声の抑揚やリズムも、それぞれ違います。
どんな話し方にしろ、相手が話すスピードが自分と比べて違う場合、相手にとってそれはストレスになり得ます。
相手にストレスを感じさせては、営業はそこで終わってしまいます。
そうならないように、相手の話すスピードやテンポをこちらが真似るのです。
これを「ペーシング」と言います。
見込み客は、自分と同じようなテンポやリズムを相手から感じる事で「共有した感覚」を持ち得ます。
たとえば、早口の人がスローペースなおしゃべりを聞くと「ノロいなあ」傾向があり、ゆったり話す人の相手が矢継ぎ早に話す人だと「せっかちだなあ」となるのです。
どちらにせよ、話すスピードが違ってくる事はストレスになり得ます。
話が進むに連れてストレスや違和感が高まり、結局は破綻しまうのです。
「用事があるからもう結構、帰って」
このように受ける事で、「この人はしっかりと話しを聞いてくれている」「同じ考え、同意してくれているかも」となります。
つまりは、見込み客の話す内容を営業担当者が「自分を尊重」してくれていると感じます。
自分の会話内容を認めてくれている「尊重」は、やがて自分を「承認」していると受け取ってくれるのです。
「同意」⇒「尊重」⇒「承認」へと、ステップアップする可能性を秘めているのです。
これは、訪問当初の厚い壁を取り除く大きな要因となり得ます。
心理学では、「返報性の原理」「バックトラック(おうむ返し)」などと言います。
身振り手振りは、本人が意識しないまでも無意識に出てしまうアクションです。
それをとにかく冷静に「観察」しつつ、ちょっとした仕草などを真似てみる。
これは、心理学的観点からも相手に共感を与えるとされています。
そのまま真似る事から「ミラーリング」と言われる技術です。
信頼関係を築くためにチャレンジ
初対面の二人が、それぞれの防衛本能がだんだんと取り除かれ、ついには「信頼できる」感情に至るまでには20分程度は必要とされています。たとえば、営業での新規開拓訪問などは緊張の極致であって、まさにラポールの法則そのままでトライ&エラーです。
結婚式や披露宴などでの相手方親族との初対面も、何かとぎこちなくなってしまいがちです。
いずれにせよ、始めて会話する場合の緊張感は、誰しもが体験するもの。
そんな時、先述の4つのノウハウを試してみては如何でしょうか。
始めから完璧など求めずに、良い意味での開き直りでチャレンジしてみて下さいね。