【世界でもっとも不幸な人生】を跳ね除けるベートーベンの名言

投稿者: | 2020-01-24
苦悩の大作曲家ベートーベンが後世に残した、数々の名言をご紹介しています。

タイトルには、その一部を引用しました。

誤解があるといけないので確認ですが、ベートーベンが【世界でもっとも不幸な人生】だったのではありません。

わたしも世界中のファンも、同じ事を言うでしょう。

神がもし、世界でもっとも不幸な人生を私に用意していたとしても、私は運命に立ち向かう

ベートーベンは20代後半から難聴が進行し、28歳には両耳の聴力をほぼ完全に失ってしまいます。

失意の大天才作曲家は、ウイーン郊外のハイリゲンシュタットのアパートで、かの有名な『ハイリゲンシュタットの遺書』をしたためますが、芸術が彼を踏みとどめます。

そして、何も聴こえない孤高の中で、人類の財宝とも言える名曲の数々を生み出したのです。

それが、『英雄』『運命』『田園』などの交響曲なのです。

ハイリゲンシュタットの家を尋ねる

私が30代のとき、一人旅でウィーンへ飛び、ベートーヴェンゆかりの名所を尋ねました。

悲痛な遺書を書いたハイリゲンシュタットのアパートは現在、こじんまりとした展示館となっており、遺書のレプリカやこれも有名な英雄交響曲の表紙も展示してあります。


『英雄』と言うタイトルは、当初ベートーヴェンはナポレオンを崇拝していた事からタイトルに引用し『ボナパルト』と記します。

しかし皇帝に即位した事を知った彼は激怒、表紙に書いたボナパルトと、ナポレオンへ献呈する旨が書かれた部分をペンでグチャグチャにかき消します。

「ナポレオンもただの人間だったか」
「民衆を踏みにじりながら暴君と化すだろう」

このように、同席していた弟子の証言が残っている事は、つとに有名です。

そして、『ある英雄の想い出のために』と書き記したのです。


メチャメチャに「英雄」の文字が殴り消してある総譜(楽譜スコア)そのものを目の当たりにすると、もう何とも言えない特殊な感情が湧き上がって来るのが分かりました。

感動でも哀れみでも尊敬でも悲しみでもない、えも言われぬ特別な感情です。


大作曲家と同じ空気を吸っている世界観

はるか天空の銀河の如き大天才ベートーヴェンが書き殴った楽譜が、いま目の前にあるという現実。

まったく同じ空気を吸い、空間に立ち、周辺の音が聞こえている自分自身の世界観。


部屋の小窓から外を眺めれば、遠くに教会の先頭が凛とそびえ立つのが見えました。

周辺の街並みは、少し湿り気があると言うかキナ臭いと表現するか、、、これも先ほどと同じです。

もう本当に、何とも表現しようがない感覚でした。


凄いとか美しいとか崇高とか、そんなものではありません。

それは、果てしない大宇宙を眼前に完璧に圧倒され言葉を失うような、問答無用で打ちのめされたような、そんな感覚・感性でした。


それがどうしたと言うのだ!

もし彼が世界中でもっとも不幸な人生に襲われたとしても、天才ベートーヴェンは、

「それがどうしたと言うのだ」 「受けて立とうではないか」
そう毅然として言い放つに違い有りません。

何が起ころうとも襲って来ようとも、泰然自若なのです。