生きていくうえで必要不可欠な本能的欲求から始まり、「人は自己が求めようとする自己実現に向けて成長していく」との前提の元で自説を展開しているのが特徴です。
基本的には5段階説で展開していますが、マズローが晩年になると一項目追加して6階層としました。
この欲求段階説は、別称「自己実現理論」とも言われ、心理学の範疇を超えてビジネスの分野でも広く引用されています。
自己実現へ向かうとの方向性が、ネットビジネスなどで起死回生、捲土重来を目指す人たちに心にとってはガツンと響くものが大きいためとも感じます。
マズローとはこんな人物
アブラハム・マズロー(1908年~1970年)はアメリカの心理学者で、ヒューマニスティック心理学(人間性心理学)の先駆者的存在です。ちなみにヒューマニスティック心理学とは、「人は絶えず内面の創造を重視しながら自己実現を目指して成長していく」との、肯定的で発展的な側面を重要視する応用心理学のひとつの潮流です。
1960年代にマズローが登場するまでの心理学会の主な潮流は、精神構造の分析、一方では行動自体を精神的に分析する方法が支配的だったのに対し、人間性心理学は全く新しい第三分野であると位置付けされていました。
それまでの心理学は、「人生とは何か、死とはそもそも何なのか」を主眼に論理展開していました。
それらに対して、欲求段階説は「そもそも人は精神的に成長するものであり、目指す目標を達成実現するために生きている」との論理展開を主眼としています。
しかし一方では、この段階説は科学的ではない、西洋的な思想にかぶれている、到底受け入れられない等々の酷評を受けていたのも事実です。
そのような学会内に巣食う批判的勢力に屈する事なく、生涯持論を展開し続けたマズローには、心底敬服するのみです。
類いもれず、ネットビジネスのジャンルにおいても、マズローを紹介しているブログやサイトは多く見られます。
ちなみに「マズローの欲求」でググッてみると、約40万件もヒットしました。
マズローの欲求段階説は、その名が示すようにピラミッドの如くそれぞれの階層で形成されています。
先ずは、ピラミッドの土台となる最初の欲求から見てみましょう。
5段階欲求それぞれの階層とは
マズローは、人の進化成長を5つの階層に分けて説明しています。
- 【生理欲求】
- 【安全欲求】
- 【社会的欲求/愛の欲求】
- 【承認欲求(尊重)】
- 【自己実現の欲求】
- 【生理欲求】 食事・睡眠・排泄・性欲など、人が生きていくうえで欠かす事が出来ない本能的欲求です。
- 【安全欲求】 家計収入や貯蓄など経済的な安定、自己成長の手段としての社会的立場の安定、家族の幸せ・将来へ向けての安定性、健康不安がない状況、交通事故やケガに対する未然の補償などが安全欲求に含まれます。
- 【社会的欲求/愛の欲求】 いずれかの集団に属している事から生まれる安心感・安定感を得ようとする欲求です。
- 【承認欲求(尊重)】 自分の存在が、その属している組織・集団から尊敬される。或いは認められると言う承認(尊重)欲求です。
- 【自己実現の欲求】 たとえ大企業の役員まで昇りつめ、経済的にも社会的にも尊敬を集める地位まで昇り詰めたとしても、それが自身が心から望んでいた自分ではない限り、心底満足を得るものではありません。
- ≪自己超越 の段階≫ 彼は、5段階欲求を発表したその後に、さらにピラミッド頂上となる階層が存在すると発表します。
【生命維持の欲求】でもあり、それぞれ特段努力することなく本能的に生じる人間本来の欲求である事から、意識する事無く第二階層の安全欲求へ移行する場合が多いのです。
これは、私たちが生きていくうえでほとんど大多数が欲する欲求です。
誰もが良い生活をしたいと望み、日々の仕事に対する不平不満から解消されて完全なる自由を得たい願望、もっと給料が増えたら、子供の将来が不安、このまま今の会社に勤務し続けて大丈夫なのだろうか等々。
これら全ては、安全欲求の裏返しです。
人は安全を得る事によって、心の安寧平安を得ようと欲する生き物なのです。
また、どんな集団に属するにしろ、対人関係・人間関係が生まれてきます。
集団に属する中での行動、活動から人に対する好奇心、恋愛感情が愛へと昇華していく場合があります。
これは逆に言うなら、どんなに努力しても頑張っても、周囲から認められなければ誰しもヤル気・モチベーションは低下していきます。
人生のやり直しという岐路に直面する事で転職などサッと行動に移せる場合はいいとしても、精神的に大きな傷を負って鬱症状を発するケースは近年特に多く見受けられるパターンです。
マズローは、承認欲求にはふたつあるとしています。
周辺からの尊敬を集める事による地位の確立、名誉を得る、その部門のトップに立つ事などがひとつの尊重欲求。
もうひとつは、周囲が云々ではなく、自分自身への投資による切磋琢磨、自己研鑽、家族身内からのまたは周辺からの完全なる自立自体も、承認欲求に含まれるとしています。
「これは本当の自分ではない」との違和感、充足不足感に絶えず苛まれる(さいなまれる)結果となるのです。
自己実現から程遠い、となるわけです。
要するに、4階層めの承認欲求や3階層の社会的欲求が満たされているから、ピラミッド頂点の自己実現が達成されたわけではないのです。
ネットビジネスもしかり。
人はそれぞれ、本当に自分がやりたい事をやる、それに没頭し、それによって高い自己満足が得られ、その上に収入まで得られるならば、これこそが自己実現の最たるものです。
【補足】頂上の階層がひとつ追加
それが自己超越の段階です。
その階層は、全体のわずか2%しかないとしています。
自己超越の特徴として、「いま、ここ」が全てであるとの認識を十二分に熟知し、そのままに生きていること、創造的精神に溢れている、深遠なる洞察力、多面的かつ多角的思考等々がある。
自己実現を達成した人に見られる15の特徴
マズローは、当時に生存中だった人、または歴史上の高名な人物の中から被験者を選び出し、その人たちに共通する性格や特徴を15項目にわたって抽出しています。これら全てを兼ね備えた人物は、なかなか周辺には見当たらないと思います。
まさに、歴史に名を残したような偉大なる人レベルですね。
- 現実をより有効に知覚し、それとより快適な関係を保つ事
- 自己、他者、自然をそのままに受け入れること
- 自発性、自然なさま
- 問題中心的
- 超越~プライバシーの欲求
- 文化と環境から独立している自立性
- 意識や評価が絶えず新鮮であること
- 崇高な体験・神秘的体験があること
- 共同社会で抱く感情
- 対人関係が寛容で深淵
- 民主主義的な性格構造である
- 手段と目的の明確なる区別
- 哲学的で悪意のないユーモアあふれるセンス
- 創造性を発揮する
- 文化に組み込まれることに対する抵抗
5段階欲求でマズローはこう話している
さすがに15項目すべてをクリアと言うのは、凄すぎ!なレベルですね。まさに「聖人君子」レベルです。
さて、マズローはこの欲求階層説で大変興味深いことを話しているので記載します。
5段階欲求について、注意すべき点がある。いかがでしょうか?
この説では、ひとつの欲求が完全に100%満たされたうえで、初めて次への階層の欲求が起
こると言うものではない。
おそらく一般の人々の生理的欲求ならば85%,安全欲求ならば70%,愛の欲求では50%,自尊心欲求ならば40%,自己実現欲求では10%が、それぞれ満たされているであろう
愛の欲求は59%くらい、自己実現欲求では全体の1割が満たされているだろうと推測しているのですね。
私の感覚では、自己実現を満たしているのはわずか数%しかいないのではないか、と思うのですが、、。
この部分は、たいへん興味深いところです。
異端の心理学者マズローが、当時の体制派に毅然として持論を展開した力強い意思には敬服する次第です。